佐世保女子高生殺害事件

2014年07月26日土曜日

佐世保女子高生殺害事件(させぼじょしこうせいさつがいじけん)は、2014年7月26日に長崎県佐世保市で発生した殺人事件である。
被害者は佐世保市の公立高校に通う女子生徒であった。遺体が発見されたマンションに住む、同級生の女子生徒が緊急逮捕された。
逮捕容疑は、被害者を自宅マンションにて後頭部を鈍器のようなもので数回殴り、ひも状のもので首を絞めて殺害した疑い。
長崎県警察によると、遺体は首と左手首が切断されていた。


概要
事件まで
2014年7月23日、加害者は継母との会話の中で、猫を殺して楽しいことや殺人願望について語っていた。
そのため、事件前日の25日に両親が病院と協議したが、病院からは「入院は施設の事情で即日の入院ができない」と言われていた。
また、「ただちに警察に通報せず、児童相談所に行く」という方針で一致していたが、その日に児童相談所に電話相談したものの、担当者から「今日はサマータイムで終わった。月曜日(28日)にしてくれ」と断られていた。
被害者は事件の1週間ほど前に、加害者の家へ遊びに行くと家族に話していた(加害者が自分から誘ったと供述している)。
2人は26日昼、佐世保市内の繁華街で買い物を楽しんだ後、加害者のマンションに戻る。
殺害
26日20時 – 22時頃、被害者の後頭部を工具で複数回殴り、リード(犬の散歩に使う引綱)で首を絞めるなどして殺害したと加害者が供述。
被害者死因は頸部圧迫による窒息死であった。
遺体は、頭と左手首が切断されていた。
胴体部分にも刃物で切ったとみられる複数の傷があった。
殺害後
事件直後に衣服を着替えて身体を洗うなど、証拠隠滅と疑われる行為が見られる。
また、加害者が自分のスマートフォンをマンションの5階から投げ捨てたと見られる。
帰宅しない被害者を心配した被害者の家族は捜索願を提出した。
27日未明、加害者のマンションを警官が訪れたが、加害者は被害者について「知らない」と答えた。
不審に思った警察官が室内に入ったところ、ベッドの上で仰向け状態の被害者の遺体と切断された頭部と左手首を発見した。
捜査
室内からはスレート切断用のこぎり、石頭ハンマー、テストハンマーが見つかっている。
加害者は「自分で買った」と供述した。
発見された凶器のうち、のこぎりはベッドの上で、ハンマーはベッドの脇と下から見つかった。
加害者は「体の中を見たかった」「人を殺して解体してみたかった」などと供述しているが、2人の間の具体的なトラブルなどは不明である。
取り調べに「殴ってから首を絞めた。すべて私が1人でやりました。誰でも良かった。」と犯行を認めるものの、受け答えは淡々として反省の様子は見られなかった。
長崎地方検察庁は精神鑑定を検討し、8月8日には佐世保簡易裁判所が精神鑑定留置を認めたと報道されている。
なお、長崎県警察は7月29日午前に「2人の間にトラブルがあったとみられる」と公表していたが、同日午後には「間違いだった」と訂正している。
2015年1月20日、前年3月2日に佐世保市の自宅で就寝中の父親の頭などを金属バットで複数回殴るなどして殺害しようとした殺人未遂の容疑で、加害者を再逮捕した。
司法判断
2015年7月13日、長崎家庭裁判所は加害者に対し、医療少年院(第3種少年院)送致とする保護処分の決定を出した。
平井健一郎裁判長は「ASD(自閉症スペクトラム障害)が見られるものの、それが非行に直結したわけではなく、環境的要因の影響もあった」との趣旨のことを述べた。
時系列
以下の時系列は全て2014年のものである。
3月 – 加害者が父親を金属バットで殴り負傷させた。
6月10日 – 精神科医が児童相談窓口に連絡。
7月7日 – 加害者が精神科を受診。
7月16日頃 – 加害者が再び精神科受診。
7月中旬 – 加害者と被害者が会う約束を交わす。
7月23日 – 加害者が継母に「人を殺したい」と打ち明ける。
7月25日 – 父親と病院が協議。児童相談所に電話相談するが断られる。
7月26日(事件当日)
15時頃 – 被害者が、加害者の家に遊びに行く趣旨を両親に告げ、外出。
18時40分頃 – 被害者が母親に「19時頃に帰る」とメール。
20時から22時頃 – 事件発生。
23時頃 – 被害者の父親が警察に捜索願を提出。
7月27日
3時20分頃 – 加害者が暮らす島瀬町のマンションで、警察官が被害者の遺体を発見。
6時10分頃 – 加害者を殺人の疑いで緊急逮捕。
8月4日 – 弁護士が父親の釈明文書を公表。
10月5日 – 加害者の父親が花園町の自宅で死亡しているのが見つかる。自殺とみられる。
加害者
加害者は事件を起こした2014年春より、親元を離れて一人暮らしをしており、その一人暮らしをしているマンションで被害者の遺体が発見された。
家庭環境
加害者は佐世保市内で育つ。
加害者の実家について不動産登記簿によれば、宅地面積は約80坪。
地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造りの建物は、延べ床面積が300平方メートルを越える豪邸である。
両親は長崎市出身で、父親は早稲田大学政治経済学部を卒業、県内最大手の法律事務所を経営しており、佐世保では有名な弁護士だった。
ジャパネットたかたの顧問弁護士をつとめ、倒産案件などを数多く手がける弁護士として知られていた。
また弁護士としてだけではなくスピードスケートの選手としても名を知られていた。
2014年10月5日、自宅で首を吊って死亡しているのが発見された。自殺とみられる。
母親は東京大学を卒業、地元放送局に勤めた。
市の教育委員を務め、教育活動に熱心だった。
兄は東京の有名私立大学で学んでいた。
人柄
幼い頃から学業は優秀で、スポーツも積極的だった。
中学校では放送部に所属しており、NHKのアナウンサーになるのが夢だった。
「検事になって法廷で弁護士である父や、弁護士志願者である兄と戦いたい」という夢を語ったこともある。
また、冬季スポーツ種目で国体に出場しており、地元でも知られていた。
その一方、「あまり笑う子ではなかった」「頭が良すぎて特殊な子」といった評価も見られる。
中学生の頃から医学書を読んだり動物の解剖に熱中したりしていた。
さらに小学6年生時の2010年頃には、同級生の給食に薄めた洗剤や漂白剤、ベンジンを混入するいたずらをくり返すなどの問題を起こしていた。
また、2013年10月に実母がガンで亡くなって以降は、不登校が続いていた。
中学校卒業後には一人暮らしを始めるが、高校は1学期のわずか3日のみ出席していた。
2014年5月、父親が再婚する。
幼馴染によると、加害者は「(父と継母とは)一緒に住みたくない。」と言っていたという。
また、中学時代に祖母も亡くなっており、その頃から猫を解体したりしていた。
被害者との関係
被害者と加害者は、生まれた家が近いということもあり、知り合いだった。
被害者の父親は海上自衛官で、佐世保の第13護衛隊に属する護衛艦さわぎりの乗組員だった。
被害者は加害者とは中学校の同級生で、写真部に属し、明るくて面倒見がよい生徒だった。
担当精神科医
加害者の診察を以前から担当していた精神科医は、2014年6月10日に佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)に電話で連絡を行った。
電話の内容は、精神状態の不安定さを懸念して「女子生徒は人を殺しかねない」といった内容だったが、文書決裁にとどめていた。
背景に、同センターの幹部職員によるパワーハラスメント発言(職権による人権侵害)があり、電話で報告を受けた職員が適切な処置について上司に相談することができなかったことなどが挙げられる。
なお、2015年2月に同センターの所長と幹部職員は戒告の懲戒処分、別の職員が文書訓告処分となっている。
有識者・専門家の見解
母親の死が犯行のきっかけという見解
小宮信夫(立正大学教授)
「実母の死をきっかけとして母親のいる被害者に憎悪を抱いた」。
佐々木光郎(元家裁調査官。静岡英和学院大学非常勤講師)
「勉強の面で親の期待に応えたいという思いが強く、それが母親の死で抑えこんでいたものが爆発した」。
桐生正幸(東洋大学教授)
「思春期の最中に母親の死に直面し、人の死・生命の意味など強く意識した。そこから興味が生じ行動に出てしまったのだ」。
長谷川博一(臨床心理士)
「母親の死と父親の再婚が自身の孤独感に繋がり、仲の良い家族のいる友人への嫉妬が背景にある」と分析。
新川てるえ(ひとり親・再婚家庭の子供を支援するNPO法人Wink理事)
「母親を失った喪失感に父親の再婚は二重の感情」。
矢幡洋(臨床心理士)
「母親の死がきっかけで、周りから孤立し、孤独な自分だけの世界に入り込んでしまった可能性もある」。
生活環境の変化が原因という見解
町沢静夫(精神科医)
「一人暮らしによる悩みのはけ口がない孤独感が社会の恨みにつながった」。
また、「極端に冷酷で感情が欠如している」「他人に対して思いやりが乏しい」「先行して動物を虐待している」という点は神戸連続児童殺傷事件の加害者と類似しており、精神病質(サイコパス)といえるとしている。
尾木直樹(教育評論家)
「一人暮らしが少女の闇を増大させた」と指摘し、「精神科医が『人を殺しかねない少女がいる』と児童相談窓口に事前に相談したにも関わらず、少女の名前が匿名だったことを理由に放置したことは重大な犯罪」と児童相談センターを批判。
父の再婚の早さについての見解
日本には喪中という慣習があるので、社会通念上、加害者の父親が再婚した時期は早いと見なされ、婚活や再婚の時期の早さが問題視されている。
この問題に関しジャーナリストの吉田明洋は、加害者の父が先妻死後すぐのパーティーで5人の女性に名刺を配って口説き始めたこと、それを知人が窘めたところ「俺は独身なんだ」と平然と答えたこと、について、目撃談を紹介している。
また、日刊ゲンダイは、顔なじみのタクシー運転手による、継母のお腹が膨らんでいたという目撃談を根拠に、継母が妊娠していたと報じている。
Asagei plusは、再婚前の妊娠の可能性もあるとしている。
魚住絹代(元法務教官)
子にとって大きな喪失体験である実母の喪の期間というのは家族で悲しみを受け止めなくてはならない時期であり、本件の再婚までの期間ではそのために不十分であり、また、子供は再婚について何か言っても大人に言い負かされてしまう存在に過ぎないと指摘した。
中野信子(脳科学者)
2005年の統計を引き合いに出して、再婚者は結婚した男全体の9%強もいて、そのうち、その男に子供がいた例はどのくらいかは知らないがゼロ人や1人ではないはずだとして、再婚の早さに一因を見る見解を退けた。
片田珠美(精神科医)
カミュの小説『異邦人』を引き合いに出して、実母のような親しい者との死別を受け入れなければならない喪の時期に殺人が起こる可能性の高さを指摘し、この時期の再婚もその追い風になったと推測する。
茅野分(精神科医)
仲の良かった母親が前年10月に他界し、父親は同年5月に再婚。
思春期真っただ中の少女の心に、大きなストレスが生じたことは容易に想像がつく。(中略)複雑な家庭環境にあった。(中略)母親が亡くなり、父親がすぐに再婚した。
社会的地位の高い父親の分別ある行動とは言えず、心理的虐待を受けた。
暴力行為を受けるよりもつらい状態で、深い傷を与える。
それ以前からの問題を指摘する見解
広木克行(神戸大学名誉教授)
加害者が2010年に起こした異物混入事件を「見逃せない出来事」と指摘。
茅野分(銀座泰明クリニック院長、精神科医)
発達障害と人格障害が合わさった疑いを指摘し、「生まれ育ちの中でむしばまれてしまった心の障害にみえる」と分析。
北芝健(警察ジャーナリスト)
神戸連続児童殺傷事件や渋谷区短大生切断遺体事件と同じ、高学歴家族の異常行動を指摘。
毛利甚八(著作家)
2010年の異物混入事件や、2014年3月の家庭内暴力事件(寝ている父親の頭部を金属バットで殴る)の時点で、加害者が要保護児童(児童福祉法第6条の3)に該当することは明白であり、周囲の人が児童福祉法に沿った適切な対応(児童相談所への通告など)を取っていれば事件自体が防がれたであろうと主張。
また、当該地区の教育委員会がまとめた資料を基に、加害者の父親がこれら事件を秘密にするよう関係者に強く迫ったことが通告の妨げとなったことを示唆。
加害者の性癖を指摘する見解
米山公啓(作家、医師)
「女子2人が互いに心を許し合った結果、当人同士で憎しみに変わっていったのでは」「過去の事件の影響を受けた可能性も」と分析。
佐川一政(作家、パリ人肉事件加害者)
「『遺体をバラバラにしてみたかった』という供述に同性愛的な愛情を強く感じる」と指摘し、「『なぜ親友を解体できるのか』ではなく『親友だからこそ解体したかった』と解釈すべき」と分析。
異常者ではないとする見解
宗内敦(臨床心理学者、都留文科大学名誉教授、日本ペンクラブ会員)
「サイコパス(精神病質者)などと言うなかれ」
その他
インターネット掲示板に事件直後、「殺しちゃったんだけど」という画像つきスレッドが投稿され、大手新聞社も次々に報道したが、県警の調査で事件と無関係であることが明らかにされた。
フジテレビの深夜アニメ『PSYCHO-PASS新編集版』第4話が放送中止され、第5話が繰り上げ放送となった。
このことについてリクルートの『web R25』ではファンの賛否両論に触れているほか、2007年9月18日に発生した京田辺警察官殺害事件の影響による『School Days』や『ひぐらしのなく頃に解』の放送中止に重ねて紹介している。
2014年7月31日に放送された『奇跡体験!アンビリバボー』は当初、「アメリカで起きた信じられない女子高生殺人事件」「6歳の少女に全米が涙した出来事」を放送する予定であったが、前者が本事件を連想させるとして内容を差し替えた。
スポーツで実績があったため、加害者の写真が佐世保市のホームページなどに掲載されていた。
しかし、事件後にアクセスが集中してサーバーに負担がかかったため、写真は削除されていった。

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